コラム

3. 会社のルールを作ろう(定款)

会社設立の第一歩として、まずは会社の基本的なルールを決めていきます。このときに決める基本的なルールは後で「発起人決定書」「定款」として文書化されますが、ここではその主要な項目について説明します。

 

1. 商号

商号(=会社名)を考えるときに気を付けるべきポイントは、同一または類似の商号がすでにあったことで、後日社名変更を余儀なくされる事態にならないように、という点に尽きます。商標については特許情報プラットフォームで無料検索できます。同一または類似の商号が既に登録されているようでしたら、場合によっては弁理士などの専門家に予め相談した方が良いかもしれません。

  • 著名な商号と同一または類似でないか
  • 同業者の商号と同一または類似でないか
  • 商標登録されている商号と同一または類似でないか

 

2. 本店所在地

本店所在地として登記する場所は、主に次のような形態があります。不特定多数に自宅を公開しなくて良く、低コストで利用できるバーチャルオフィスについては銀行口座の開設を断られたという話もよく聞きますので、利用は慎重に考える必要があります。「銀行口座が開設できなかったら全額返金!」と謳っているところもあるくらい、バーチャルオフィス側にとっても悩ましい問題なんでしょうね。

  • 自宅兼事務所
  • 賃貸オフィス
  • シェアオフィス
  • バーチャルオフィス

 

3. 事業の目的

会社は、事業目的の範囲内でのみ活動できると定められています。ですので、実際に開始する事業だけでなく、将来手を広げる可能性がありそうな事業をできるだけ記載しておきます(大体10個程度)。思い描いている事業をどのような文章で表せば良いかを考えるには、次の方法があります。

  • 事業目的の検索サイト(こことか)で事業に関連するキーワードで検索し、自社の事業にマッチしそうなものを選ぶ。
  • 自社と同じ事業を展開している憧れの会社の登記簿謄本を入手し、そこに記載されている事業目的を参考にする。
  • 許認可が必要な事業では、事業目的で記載しておかないといけない決まり文句がある場合もあるので要注意。

 

4. 事業年度

会社は1年間の事業年度を、何月何日までと自由に決めることができます。その1年間の儲けや末日の財産を損益計算書・貸借対照表として集計し、株主への報告や配当、税金の申告を行います。日本では3月31日まで(3月決算)と12月31日まで(12月決算)が最も多い事業年度となっており、これにならうのはわかりやすいのですが、中小企業においてはもっと実利を取った事業年度とすることをお薦めします。次のような視点を踏まえ、可能であれば税理士と相談しながら検討すると良いでしょう。

  • 資金繰りの視点(銀行に決算書を提出するときの印象や納税への備えとして、現預金残高が最大となる月)
  • 税務の視点(消費税の免税期間、設立第1期の税務申告までの期間、業績と役員報酬の設定時期など、税務メリットを活かせる時期を選ぶ)
  • 人手の視点(会社や会計事務所の繁忙期を避け、手厚い対応や報酬の抑制を図る)

 

5. 資本金の金額

会社を設立するときに用意したお金が資本金です。事業を始めてからしばらくは出費(仕入れ、経費、人件費など)が先行し、売上が上がって実際に入金があるまではしばらく時間がかかります。売上の入金で出費を賄えるようになるまでどれくらいの時間と資金が必要で、それを資本金と創業融資でどうまかなっていくのかは非常に重要な問題です。そうした資金繰りの視点のほかに、税務や許認可の視点からも設立時の資本金を考える必要があります。

  • 資金繰りの視点
    • 事業が軌道にのるまでの必要資金はいくらか?
    • 創業融資の借入額は資本金×2~10倍まで
  • 税務の視点
    • 1,000万円の壁(消費税の設立2期の免税事業者、住民税の均等割)
    • 1億円の壁(事業税の外形標準課税、法人税の中小企業者)
  • 許認可の視点
    • 許認可が必要な業種では最低限必要な資本金額が定められている場合もある。

 

6. 出資割合(議決権比率)

出資者がこの資本をいくらずつ負担するかが出資割合で、出資後の割合のことを議決権比率(持ち分比率、持株比率)と呼びます。どれくらいの議決権を確保しておいたらいいかの参考となるのが、株主総会の決議をする際の3分の2以上、過半数(ちょうど50%、ではダメです)、3分の1以上というボーダーラインです。

  • 3分の2以上…特別決議(定款の変更、減資、合併・事業譲渡などの組織再編、第三者割当増資など)
  • 過半数…普通決議(取締役の選任・解任、監査役の選任、役員の報酬決定、剰余金の配当など)
  • 3分の1以上…特別決議を阻止することができる拒否権

議決権比率は会社の重要な決定事項における力関係を表し、基本的には設立時に最も高く、減ることはあっても、増やすためには関係者の合意を得たり多額の資金が必要など、とても困難だと覚えておいてください。創業役員が2人であっても、経営が上手くいかないときなど将来どんな仲違いがあるかわかりません。安易に50%ずつとせず、どちらかが会社の主導権を握れるように傾斜をつけた議決権比率とすることをお薦めします。

 

7. 発行済株式数と発行可能株式総数

設立時はわかりやすさを最優先に1株10,000円として、「資本金額÷10,000円=発行済株式数」とすると良いでしょう。1株を100万円、500万円など大きな金額にして発行済株式数を少なくしてしまうと、将来の資本政策で問題となる場合があります。

発行可能株式総数は特に制限はないので、すぐに上限に達してしまわないよう10万株、100万株などとしておくのが良いでしょう。公開会社は発行可能株式総数は発行済株式数の4倍以内という制約がありますが、設立したての未上場会社にはそうした制約はありません。発行済株式数についても同様ですが、IPOが近づいてくると証券取引所の基準を満たすよう単元株制度の導入、株式分割や定款変更を行って調整しますので、設立時から上場時の基準を意識する必要はありません。

 

8. 役員構成

株式会社の役員(取締役、監査役など)は任期があり、任期が終わるときに株主総会で再度選任されれば更新されることになります。この任期は、定款に特に定めがなければ2年(監査役は4年)で、定款で定めることで最長10年まで伸ばすことができます。

役員は株主との委任契約ですので、雇用契約による従業員と異なり、労働基準法などの法律でその立場が保護されているわけではありません。また、役員に対する報酬・賞与には、それを調整して税金逃れできないようにと税務上の厳しい制約があります(報酬は毎月固定額であること、賞与は年度初めに予め支給時期と金額届け出ておくことなど。変更できないわけではなく、変更しても税務上の費用として認められず税金がかかる、という意味ですが)。

会社の重要な意思決定を行うことは役員ならではの醍醐味ですが、これまで述べたように役員になることで制約を受ける場面もありますので、必要に応じて「高待遇の従業員」という立場も検討しながら役員構成を考えていく必要があります。

 

9. 定款の認証手続き

会社の基本的なルールを定めた定款が完成したら、所轄の公証役場で公証人による認証を行います。その際、定款認証による手数料約52,000円と収入印紙40,000円がかかります(電子定款にすれば収入印紙40,000円は不要です)。

 

 

タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名:佐藤秀峰