コラム

6. 消費税のポジションを検討しよう

「期末までに手続きすれば数十万円が入金されますよ、フフフ…」

先日、設立第1期を終えようとしている会社にこんなご提案をして大変喜ばれました(これだけ聞くと怪しげな提案ですね…)。

会社の消費税は原則として、「売上などでお客様から預かった消費税」から「経費などで外部に支払った消費税」を差し引いた金額を納付し、それがマイナスとなる場合には還付されます。ただ、例外や例外の例外、有利な制度を選ぶための手続き、設立直後だけの特例などもあり、会社がどのような状態にあるのかを正しく把握することはとても難しい。その辺りをしっかりと見極めて、最も有利なポジションを取るようアドバイスをするのが私たち税理士の役割ですので、今回はその概要についてご説明します。

ちなみに、税理士がクライアントから損害賠償を求められるのはダントツで消費税についてです。これだけ見ても、最も有利なポジションの選択がどれだけ難しいかわかりますね。

1. 税目別支払件数と支払金額

(『税理士職業賠償責任保険事故事例 2018年7月1日~2019年6月30日 株式会社日税連保険サービス』より抜粋)

 

会社が納める消費税の基本

冒頭でも書いたとおり、会社は「売上などでお客様から預かった消費税(以下、「預り消費税」といいます)」から「経費などで外部に支払った消費税(同様に「支払い消費税」といいます)」を差し引いた金額を、期末から2か月以内に納付します。

2. 納付または還付

逆に「預り消費税」が少なく「支払い消費税」が多い場合は、その還付を受けることになります。これが消費税の原則、これだけならシンプルですね。

 

設立から2期は”原則”消費税が免除される

ここから本題。まず、設立から2期は消費税の納付をしなくて良いという免除の特例があります。消費税は2期前(「基準期間」と呼びます)の状況をもって会社のポジションを判断することが多々あり、設立から2期はその基準期間が存在しないから免税でいいよ、という主旨です。

ただし次で説明するように、すべての会社が設立から2期とも消費税を免除されるわけではないので注意が必要です。また、会社の事業によっては”あえて免除とならない方が良いケース”も存在します。

 

消費税を免除されないケースに注意

期首の資本金が1千万円以上あると、この設立時の消費税の免除が適用できず、消費税の納付をしなければなりません。例えば、資本金100万円で会社を設立し、第1期の途中で1,000万円の増資をした場合は、第1期(開始時の資本金100万円)は消費税が免除されますが、第2期(開始時の資本金1,100万円)は消費税が免除されなくなります。また、期首の資本金が1千万円未満であっても、会社を支配する者の基準期間相当期間の課税売上が5億円超の場合は同様に消費税が免除されなくなります。

 

消費税の免除を受けない方が有利なケースも

そして、ここが重要なのですが、事業の内容によってはあえて消費税の免除を受けない方が有利なビジネスもあります。

なぜか。

消費税が免除されるということは、還付も受けられないからです。

3. 免除は還付なし

消費税の免除を受けない方が有利な(=消費税が還付される)のは、主に次のケースです。

  • 海外向けの売上(輸出免税取引)が多く、預り消費税が発生しない
  • 初期に多額の設備投資をするため、支払い消費税が多く発生する
  • 売上が立つまで時間がかかり、当面は経費の支払いのみ発生するビジネス

その場合には、課税事業者選択届出書という書類を税務署に提出することで、免除を受けないようにすることができます。

 

おわりに

設立当初にどうやって消費税の有利なポジションを取るかの概要をお伝えしましたが、正直これだけでは不十分です。実際に検討する際にはさらに次の事項を加味し、第1期、第2期だけでなくそれ以降も見据えて最適なポジションを選択していく必要があります。

  • 会社のどの売上が「預り消費税」の対象になるのか?
  • 同様に、どんな経費が「支払い消費税」の対象になるのか?
  • 課税事業者選択届出書を提出したら、どんなデメリットがあるのか?
  • 第3期目以降の消費税はどのように判断すれば良いのか?

会社の計画によって結論がまったく変わり、その条件分岐も非常に複雑な設立時の消費税の検討。ここについては、税理士としっかり相談することをお勧めします。

 

 

タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名:佐藤秀峰