コラム

12. 脱・ドンブリ勘定のすすめ

「ドンブリ勘定をやめたいんだよね」

新興住宅街で小児科のクリニックを開業、地域の評判もよく次は医療法人化して多店舗展開だと意気込むやり手ドクターからの相談を受けたのが昨晩。

すべての入出金に目が行き届き、デコボコしながらもなんとなく通帳の数字が増えていく個人商店ならドンブリ勘定でも大きな問題はありません。でも多店舗展開するために銀行から借金をし、隅々まで目が行き届かない店舗が増えてくるとそうはいかない。「黒字倒産」という言葉があるように、損益は黒字でも資金が底を尽きれば会社は死ぬ。そこで大事になってくるのが、お金の流れの整理と月次決算によって資金繰りの見通しを立てやすくすることです。

ドンブリ勘定から脱却したい、でもやり方がわからない。そう考えている経営者も一定数いると思うので、開業医の自宅で男二人、コンビニ弁当をつつきながら語ったことを備忘がてら記録しておこうと思います。

 

1. お金の流れを整理する

私は会計事務所や上場準備会社、それから独立後に関与した幾つかの顧問先で効率的なバックオフィスを整備してきました。それまで一人親方の長時間労働で支えられてきたバックオフィス業務を効率化するために、まず手を着けるのがお金の流れの整理です。

会社のお金の流れには規則性があります。

  • 売上が銀行に入金される
  • 現金で受け取った売上を、銀行に入金する
  • もらった請求書を、銀行振込で支払う
  • お給料(と立替経費)を、銀行振込で支払う
  • 税金、社会保険料などを、銀行振込で支払う
  • コーポレートカード(クレジットカード)で少額の経費を支払う
  • 極少額かつ急ぎの経費は、その店舗の責任者などに立て替えてもらう

この流れを整理し、決して混ぜないこと。そして、例えば支払の請求書は毎月15日と末日にまとめて処理する等、コントロールできる入出金はルーティン化を徹底すること。お金の出入りの予測可能性(どの経路からいつお金が出入りするかの予測のしやすさ)が超大事なのです。

 

2. 現金(キャッシュ)は極力使わない

現金は入出金の記録が残らないので、自分できちんと記録しなければならなりません。で、そうしたマニュアル業務は面倒くさい上に人は絶対間違う。帳簿の作成ミスのほか、お釣りの渡し間違いなど不注意でズレることもあるし、1本くらいジュース買ってもバレないだろうと使い込まれることもあります。

なので、私は会社で現金(キャッシュ)を持たない運用をお薦めしています。大事なので繰り返します、会社の現金(キャッシュ)は持たないに限ります。

ちょっとした文房具を買う、出張で交通費がかかるなどどうしても現金で支払わなければならない場合は、社員の方に立て替えてもらい、後日給与と一緒に振り込んで精算します。

一時的にでも従業員に負担させるのは酷と思うならば、立替経費をする従業員にあらかじめある程度の金額を渡しておき、退職時に返してねと合意しておけば問題ないでしょう。

どうしても現金決済が必要な小売店舗などは、毎日の現金残高を二人で確認し、翌日のつり銭準備分だけ残して毎日銀行に入金します。そしてここ大事なのですが、売上として受け取った現金を経費の支払に使わない。上記の従業員立替で対応する。これを徹底すれば、現金出納帳の出金と預金口座の入金記録が一致するはずなのです。

現金(キャッシュ)はなるべく使わない。どうしても使うなら入金と出金を完全に分ける、銀行の記録と照合できるようにしておく、現金残高のチェックは必ず2人以上(ダブルチェック)で行う等、厳格な管理をしないといけません。

 

3. 公私混同、ダメ絶対

上記1.でも述べた通り、会社のお金の出入りを整理し、予測可能性を高めることが脱・ドンブリ勘定に必要ですが、ここにプライベートの支出が紛れ込むとノイズになってしまいます。

ノイズによって予測可能性の精度が落ちるだけでなく、プライベートの支出かどうかを経理担当が検出し除去しなければならないため、後述する月次決算の工数が一気に増える。「うちの経理は残業ばかりで効率が悪く…」と経営者が嘆くことの原因は、その前工程(お金の出入り)がぐっちゃぐちゃだからその解読に時間がかかる、ということが往々にしてよくあります。

家庭の支払いは会社の銀行口座から振り込まない。クレジットカードはコーポレートカードとプライベート用の2枚を使い分ける。会社のお金の流れにプライベートのお金の流れを混ぜない、当たり前だけどこれも大事です。

 

4. 月次決算で異常数値をモニタリング

決算を締める前工程(お金の出入り)をいかにスッキリ整理するか、というのがここまでの話でした。お金の流れが効率的になってはじめて月次決算ができ、毎月の数値に異常がないかモニタリングできるようになります。ここまでできてようやく、ドンブリ勘定から脱却したと言えるでしょう。

そして、最近ではクラウド会計ソフトの活用で月次決算の手間を大きく減らすことが可能になりました。クラウド会計ソフトのメリットは主に2つ。

一つ目が「月次決算に必要な情報の自動収集」です。クラウド会計ソフトは以下のサービスと連携でき、その情報を自動的に読み込んでくれます。

・インターネットバンキング
・クレジットカード
・経費精算アプリ
・給与計算ソフト など

そしてクラウド会計ソフトの自動仕訳機能をうまく設定すれば、その自動で読み込んだデータを自動で経理処理してくれます。これまで預金通帳を見ながら経理マンが仕訳をバチバチ入力していた工程が不要になるのです。

二つ目は「Web経由でいつでも帳簿が見れる」。

会計事務所の職員が印刷した月次決算を手に月いちで説明に来る、では何かと不便。Web経由で帳簿データを直接見ることができるクラウド会計ソフトなら、「今月の通信費が多いけどなんで?」と疑問を持ったそのときにアクセスし、内容を確認することができます。

このクラウド会計ソフトのメリットを享受するには、その前工程(お金の出入りの整理)が必要不可欠。お金の出入りを整理し、クラウド会計で手間をかけずに月次決算をしましょう、というのがドンブリ勘定から脱却するためのコツなのです。

 

5. おわりに

私たちは顧問税理士業務に加えて、中小企業の経理業務を効率化するための管理体制整備と運用を代行するサービスを提供しています。その範囲は経理に限らず、給与計算、支払代行まで含まれており、平たく言えば「バックオフィス業務の丸投げ」です。

人材不足の昨今、中小企業がバックオフィス業務全般を効率的にこなしていける事務スタッフを雇うのは非常に難しい。ならば、身近な専門家である税理士が、バックオフィスのプロとしてその部分を引き受けましょうというのがこのサービスを手掛ける理由です。

物事は最初が肝心といいますが、バックオフィスについても同じ。会社の初期に効率的な管理体制を整備しておけば、その後の成長にもスムーズに対応できる体制が築かれると信じています。興味を持たれた方は、是非お気軽にお問合せください。

 

 

タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名:佐藤秀峰