住民税(特別徴収)
会社が従業員の給与から住民税を天引きし、本人に代わって市区町村に納めることを「住民税の特別徴収」といいます。会社は給与から住民税を特別徴収し、毎月納付する義務があります。ここでは給与計算の担当者などが住民税(特別徴収)の実務をする上知っておくべき基本的な項目を解説します。

住民税(特別徴収)とは?
個人の所得(=収入ー経費)に課される税金で、居住している市区町村に納める税金です(所得に対する税金は他に、国に納める所得税があります)。住民税の納付方法は2種類あります。
- 普通徴収…市区町村から届く納付書で、自分で納付する方法。
- 特別徴収…毎月の給料から天引きして、本人の代わりに会社が納付する方法。
会社は従業員に支払う給料から住民税の特別徴収分を天引きし、翌月10日までに各市区町村に納付しなければなりません。これを「住民税の特別徴収」といいます。
住民税(特別徴収)の納付スケジュール
前年の所得に対する住民税を、毎年6月からの12回で分割納付します。6月~翌5月という変則的なサイクルとなっているのが住民税(特別徴収)の特徴です。
- 対象となる期間…2022年1~12月分の所得 に対する住民税を
- 納付する期間…翌2023年6月~2024年5月 分として納付する
また、各月分の納付期限は翌月10日です(土日祝日の場合は翌営業日)。給料日が毎月25日の場合、6月分の住民税を6月25日に支給する給与から天引きし、それを7月10日までに会社が納付するという流れになります。
- 2023年6月分 → 2023年7月10日が納付期限
- 2023年6月25日支給の給与から天引き → 2023年7月10日までに会社が納付する
納付額は市区町村から通知書が届く
住民税は、毎年1月1日時点で住民票が登録されている市区町村に納めます。
毎年5月になると、従業員が1月1日時点で住民登録していた市区町村から会社宛てに「特別徴収税額の決定通知書」という書類が一斉に届き始めます。給与計算の担当者はその書類で従業員ごとの毎月の住民税額と納付先を把握し、6月以降に天引きする住民税額を給与計算に反映し、その預かった住民税を翌月10日までにそれぞれの市区町村に納付します。
なお、住民税の納付先は従業員がその年の1月1日時点に住民票を登録していた市区町村に12回分を納め続けます。転居などにより現住所と納付先が違うこととなった場合でも、納付先の変更は必要ありません。
住民税(特別徴収)の納付のしかた
ダイレクト納付(eLTAXで納付情報を発行)
事前にeLTAX(地方税ポータルシステム)に会社の銀行口座を登録しておくことで、eLTAXで納付先の市区町村、納付額などを入力した後に、そのまま納付の実行まで完了させることができます(納付実行日の予約も可能)。
振込先を自由に指定できるわけではないので不正送金のリスクがなく、Webバンクの利用権限がない方でもPC上で納付まで完結できるので大変便利です。この納付方法が最もお勧めです。
ペイジー納付(eLTAXで納付情報を発行)
eLTAX(地方税ポータルシステム)で納付先の市区町村、納付額などを入力すると、ペイジーによる納付情報も発行できるので、Webバンクや銀行のATMでそのペイジー納付情報を入力して納付します。
Webバンクの「個人地方税納付サービス」で納付
Webバンクによっては住民税(特別徴収)を納付するメニューがあるので、そのサービスを使って納付できます。ただ、利用料が高い上位プランでないと使えなかったり、そもそもこのサービスを提供していないWebバンクもあります。
納付書による納付
市区町村からの通知書に納付書の冊子も同封されてきますので、それを銀行窓口に持参して納付します。
入社時、退職時の会社の手続き
会社からの納付が誰の分の住民税かを各市区町村が正しく把握するために、従業員が入社したとき、退職したときに会社がしなければならない手続きを説明します。これらの手続きを正しく行わないと、退職済みの従業員についての督促状が届いたり、天引きしなければならない住民税額がわからないといった不都合が生じてしまいます。
従業員が入社したとき
入社前の状況によって必要な手続きが変わってきます。
前の会社から特別徴収を引き継ぐ場合
前の会社が発行した「給与所得者異動届出書」を本人から受領し、必要事項を追加で記入して会社から市区町村に提出します。これにより、市区町村としては特別徴収する会社が変わったことを把握します。
前の会社で一括徴収された(今年度分は全額納付済み)の場合
住民税(特別徴収)は6月~翌5月が1サイクルですが、その残り期間が短いときに前職を辞めたときには、残りの期間分の住民税額を一括で徴収される場合があります。そのようなときは、翌年度分の住民税から当社で特別徴収を開始するために、「普通徴収から特別徴収への切替申請書」を提出します。
普通徴収(自分で納付している)だった場合
まだ納付期限が到来していない普通徴収の納付書を本人から回収し、その未使用の納付書と「普通徴収から特別徴収への切替申請書」を会社から市区町村に提出します。
従業員が退職するとき
退職後の進路、退職のタイミングによって必要な手続きが変わってきます。
次の勤務先で特別徴収を続ける(引き継ぐ)場合
住民税の納付状況(何月分まで、いくら納付済みか等)を記入した「給与所得者異動届出書」を本人に交付します。本人がそれを転職先に提出しますので、市区町村には送らないようご注意ください。
次の勤務先の有無がわからない場合
会社が特別徴収義務者でなくなることを「給与所得者異動届出書」に記載して、市区町村に提出します。退職日と本人の意向によって記載内容が変わってきますので、注意が必要です。
退職日:6月1日~12月31日
翌年5月分までの未納付残額を最後の給与等から一括徴収するかどうか確認し、一括徴収を希望する場合は最後の給与などから一括徴収します。一括徴収を希望しない場合は、普通徴収に切り替えることを記載します。
退職日:1月1日~5月31日
原則として残額を一括徴収します。