社会保険
社会保険とは、不測の事態が起こったときに保険金がもらえるよう、国民全員でお金を貯めておくために国が定めた保険制度です。不測の事態とは、病気やケガ、出産、失業、障害、老齢、死亡などです。「社会保険」は総称で、その中には細分化された各種保険制度がぶらさがっています。
ここでは会社を通じて従業員が加入する社会保険のうち「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」の3つ(狭義の社会保険)について、バックオフィス担当者の目線で説明します。

目次
社会保険、各制度の簡単な説明
健康保険とは
病気やけが、それらによる休業、出産や死亡などの事態に備える公的な医療保険制度です。
医療機関で保険対象となる診察を受けた場合、自分が支払うのは原則3割で、残りの7割が健康保険から支払われます。
介護保険とは
65歳以上の方は、市区町村の要介護認定によって介護サービスを受けることができます。その介護サービスを運営していくための必要な財源として、40歳以上の方が毎月支払うこととなる公的な介護保険制度です。
健康保険と併せて納付することとなり、40歳の誕生月から発生します。
厚生年金保険とは
会社に所属している人が加入する公的な年金制度です。
高齢で働けなくなった、被保険者が死亡した等の事由により、長期にわたり(死亡の場合は遺族が)定期的にお金を受け取れる制度です。
社会保険料の納付方法
納付期限は翌月末日
社会保険料は、その翌月末日が納付期限となります。
納付の仕方としては次の3つが一般的ですが、納付書は翌月20日頃に発送されるため、月末の納付期限まであまり時間の余裕がありません。納付漏れなども防げるので、早々に口座引き落としの設定をしてしまうのが一番手間がかかりません。
- 納付書を銀行に持参する
- 納付書に記載されているペイジー納付情報で納付する(Webバンク or ATM)
- 口座引き落としの設定をする
負担は会社と本人で半分ずつ、納付は会社がまとめて
社会保険料は、会社と本人で半分ずつ負担します。ただし納付は、会社が本人負担分を給料から天引きし、会社負担分とまとめて納付します。会社の支出額と費用負担額の関係は次の通りです。
A:給与(額面) 100
B:社会保険料(本人負担分) 15
C:社会保険料(会社負担分) 15
D:本人への給与支給 A-B=85
E:社会保険料の納付 B+C=30
会社の費用総額:A+C=115
会社の支出総額:D+E=115
月末時点の在籍者のみ発生する
社会保険料は「月末に在籍していれば、その月の社会保険料がかかる」となります。
退職日が月末日であればその月の社会保険料がかかりますが、退職日が月末日以外の日であれば、例え月末の1日前であってもその月の社会保険料はかかりません。
ただし、本人はその月についてご自身で国民健康保険・国民年金に加入するか、転職先で社会保険に加入する必要があります。なので、退職日が月末以外で社会保険料が発生しないのは、あくまでも会社側だけのメリットとなります(会社負担分の社会保険料が1ヶ月分少なくなるので)。
社会保険料の決まり方
原則は4-6月の平均給与×保険料率
社会保険料は実際の給与額ではなく「標準報酬月額×保険料率」で計算されます。この標準報酬月額は「4-6月の給与の平均が ●円~●円 の範囲内なら標準報酬月額 ●円」として決定されます。
例)
4月:287,000円
5月:286,000円
6月:279,000円
⇒4-6月の平均:284,000円
∴標準報酬月額は 280,000円(270,000円以上 290,000円未満の範囲)
なお、標準報酬月額には上限があります(健康保険料・介護保険料は月1,390,000円、厚生年金保険料は月650,000円以上)。そのため、実際にはこれより多くの給料をもらっていても、社会保険料は頭打ちとなり増えません。
保険料率は会社が属している健康保険組合によって多少変わってきますが、令和4年度現在の協会けんぽ(中小企業が属している一般的なもの)の保険料率は合計で29.75%となっています。本人と会社でそれぞれ標準報酬月額の約15%ずつの社会保険料を負担していることになります。
健康保険料(A) 9.81%
介護保険料(B) 1.64%
厚生年金保険料(C) 18.30%
合計(A+B+C) 29.75%
調整その①:給与の増加・減少(一時的なものを除く)
いったん4-6月の平均給与をベースに決まる標準報酬月額ですが、その後の給与の改定で、実際の給与額が標準報酬月額とかけ離れてしまうことがあります。
一時的な手当等を除いた固定的賃金が一定額以上、3ヶ月連続で現在の標準報酬月額とかけ離れた場合には、標準報酬月額の見直しをする必要があります。
調整その②:賞与
毎月の給料とは別に賞与が支給される場合には、賞与総額から千円未満を切り捨てた金額を標準賞与額として社会保険料が決定されます。
なお標準賞与額についても、標準報酬月額と同様に上限があります(健康保険は年度の累計額が573万円、厚生年金保険は月150万円)。そのため、これを超える賞与については社会保険料はかかりません。
社会保険の手続き
社会保険について会社が手続きすることは、主に次の3つです。
算定基礎届(通称:定時決定、算定(さんてい))
目的:標準報酬月額を決定するために、4-6月の給与支給額を届け出ます。
時期:毎年7月1日~10日
効果:9月分から適用される標準報酬月額の決定通知書が届きます。
月額変更届(通称:月変(げっぺん))
目的:固定的賃金の変動により標準報酬月額の見直しをする際に届け出ます。
時期:報酬の変動があった月から3ヶ月目の給与を支給した後、速やかに
効果:改定後の標準報酬月額の決定通知書が届きます。
賞与支払届
目的:賞与を支給した際に届け出ます。
時期:賞与支給後5日以内
効果:賞与にかかる社会保険料が決定します。