社員が退職する時の手続き

社員が退職するときには、税金や社会保険など多方面に対しての手続きが発生します。退職者と事前に確認しておくこと、必要な手続きをあらかじめ理解しておき、事務処理が円滑に進むよう必要な手続きについてまとめました。

退職者との確認事項

健康保険証の返却

健康保険証は退職日までしか使うことができません。また会社は健康保険証を年金事務所等に返却しなければならないので、退職後は家族の分も含め速やかに健康保険証を返却するよう退職者にご説明ください。

貸与していた備品類とともに退職日に返却してもらう、退職後速やかに郵送してもらうなどの方法で返却してもらうことが多いようです。

退職後の健康保険・年金

退職日の翌日から次の会社で社会保険に加入することが決まっている場合を除き、国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。

健康保険と年金それぞれの状況によって必要な手続きが変わってきますが、未加入の期間が生じないよう、退職後は速やかにお住まいの区役所で相談することをご案内ください。

なお国民健康保険等の加入に際しては、会社が発行する社会保険資格喪失証明書の提出を求められることがあります。退職者から社会保険資格喪失証明書の提出を求められたら会社は発行する義務がありますので、速やかに作成して退職者に交付します。

退職後の住民税

住民税の特別徴収(給料からの天引き)は、毎年6月から翌年5月までが一つの期間となっています。

特別徴収をしている社員の退職日が6月から12月までの間であれば、未納付の住民税額をどうするか退職者自身が選択することができます。会社としては未納付の住民税について次のどれを選択するか、退職者の希望を前もって聞いておく必要があります。

  • 最後の給与または退職金から一括で控除する
  • 自分で納付する「普通徴収」に切り替える
  • 転職先に「特別徴収」を引き継ぐ

なお、退職日が1月から5月までのときは最後の給与または退職金から一括で控除し、控除できない場合に限り普通徴収(自分で納付する方法)に切り替えます。退職者が選択することはできませんので、希望を聞く必要はありません。

税務関係の書類の提出(退職金がある場合)

退職金の支給がある場合、「退職所得の受給に関する申告書」を記入して提出してもらいます。この申告書の提出によって退職所得に関する軽減措置の適用を受けることができ、原則として退職金については確定申告をしなくて済むので、退職者自身にとって有利になります。

この書類の提出がない場合は一律20.42%の源泉徴収が必要となります。

離職票の発行希望の有無

退職してから次の就職先が決まるまで、一定の要件を満たす場合には雇用保険の基本手当(失業手当)を受給することができます。その失業手当の申請に必要な「離職票」の発行を希望するかどうか確認しておく必要があります。

【失業手当をもらうための要件】

  • 雇用保険の加入期間が過去2年間で通算12ヶ月以上あること
  • ハローワークで求職の申込みを行い、積極的に転職活動をしていること

なお、失業手当の受給要件を満たしていない、給付制限期間内に転職先が決まっている等の場合には失業手当を受給できませんので、離職票は必要ありません。

雇用保険の手続き

雇用保険の資格喪失届

退職日から10日以内に、「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成して管轄の公共職業安定所に提出します。

離職票の発行(退職者から依頼された場合)

退職者が離職票の発行を希望する場合には「雇用保険被保険者離職証明書」を作成し、労働者名簿や出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、退職届などを添付して管轄のハローワークに提出します。その後、ハローワークから「離職票」の交付を受けたら退職者に送付します。

社会保険の手続き

健康保険と厚生年金保険の資格喪失届

協会けんぽの場合、退職日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を作成して管轄の年金事務所(広域事務センター)に提出します。

健康保険証の回収・返却

協会けんぽの場合、退職者から健康保険証を回収して管轄の年金事務所(広域事務センター)に返却します。健康保険証の紛失などで回収できない場合には、別途「健康保険被保険者証回収不能届」を作成して提出する必要があります。

住民税(特別徴収)の手続き

特別徴収に係る給与所得者の異動届

退職者に対して住民税の特別徴収をしていた場合には、今後は会社からは納付しないことを伝えるために「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を作成し、翌月10日までに住民税納付先の市区町村に提出します。

なお、転職先で特別徴収を引き継ぐ場合にはこの書類を、市区町村ではなく本人に交付します。納付者(本人から天引きして納付する者)が転職先の会社に変わったことを届出るために、退職者を通じて転職先から市区町村に提出してもらうためです。

未納付残額の納付(一括徴収の場合)

未納付の住民税を最後の給与または退職金から一括で控除した場合には、翌月10日までに納付します。

源泉徴収票の発行

給与所得の源泉徴収票

退職日から1ヶ月以内に、その年中に支給した給与、源泉徴収した税額などを集計した「給与所得の源泉徴収票」を作成して本人に送付します。

退職所得の源泉徴収票(退職金がある場合)

退職金の支給がある場合には、「退職所得の源泉徴収票」を作成して本人に送付します。

まとめ

社員が退職する時には、社会保険、雇用保険、所得税、住民税と多岐にわたる事務手続きが発生します。また、それらを効率的に処理するためには、退職者とのコミュニケーションを十分に行っておくことが重要です。

退職手続きにあたって必要なタスクを再掲しますので、円滑な事務処理の遂行にお役立てください。

【本人と相談しておくこと】

  • 健康保険証を速やかに返却することの案内
  • 退職後の健康保険・年金について区役所等に相談に行くことの案内
  • 未納付の住民税の取扱いの希望の確認(退職日が6~12月の場合)
  • 「離職票」の発行を希望するかどうかの確認
  • 「退職所得の受給に関する申告書」の提出依頼(退職金がある場合)

【会社が行う事務手続き】

  • 給与所得の源泉徴収票の発行
  • 給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書の提出
  • 健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き
  • 健康保険証の受領・返却
  • 雇用保険の資格喪失手続き
  • (必要時のみ)未納付の住民税の一括納付
  • (必要時のみ)社会保険資格喪失証明書の発行
  • (必要時のみ)離職証明書の発行
  • (必要時のみ)退職所得の源泉徴収票の発行
  • (必要時のみ)退職所得の受給に関する申告書の保管