「額面」と「手取り」、「会社負担総額」は別物
給与には、少なくとも3つの金額があります。
額面(総支給額)
基本給や各種手当などを合計した、控除前の給与です。
手取り(差引支給額)
額面から社会保険料、所得税、住民税などを控除し、実際に従業員へ振り込む金額です。
会社負担総額
額面に、会社が負担する社会保険料等を加えた実質的な人件費です。
例えば「月給30万円」で採用したとしても、従業員に30万円がそのまま振り込まれるわけではなく、会社の負担が30万円で済むわけでもありません。
この違いは、前の記事でも説明した給与計算の基本です。
特に経営者は、採用や昇給を判断するときに「額面」だけで人件費を考えないことが重要です。
勤怠は原則として「1分単位」で管理する
給与計算では、従業員が実際に働いた時間を正確に把握する必要があります。
例えば、
「15分未満の残業は切り捨てる」
「30分単位で残業時間を計算する」
といった方法で、日々の労働時間を一律に切り捨てることはできません。
労働時間は原則として1分単位で把握し、それに基づいて賃金を計算する必要があります。
一方、1か月間の時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数を合計した結果については、一定の端数処理が認められています。
また、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含める固定残業代を採用する場合にも注意が必要です。
固定残業代を支給していれば、残業時間を管理しなくてよいわけではありません。
実際の残業時間に基づいて計算した割増賃金が固定残業代を上回れば、その差額を追加で支払う必要があります。
そのため、固定残業代を導入している会社でも、正確な勤怠管理は必要です。
社会保険・労働保険には加入義務がある
会社を設立して従業員を雇用すると、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などへの加入が必要になります。
特に法人の場合、健康保険と厚生年金保険は、原則として加入が義務付けられています。
ここで注意したいのが、試用期間中の従業員です。
「試用期間だから社会保険に加入させなくてもよい」というものではありません。
加入要件を満たしていれば、試用期間中であっても原則として加入する必要があります。
また、社会保険料は会社にとって大きな人件費の一つです。
従業員を採用してから初めて負担額を知るのではなく、採用計画の段階から会社負担分を含めて人件費を見積もっておく必要があります。
給与の支払いには「5つの原則」がある
労働基準法では、給与の支払いについて基本的なルールが定められています。
一般に「賃金支払の5原則」と呼ばれるものです。
① 通貨払いの原則
給与は原則として通貨で支払います。
② 直接払いの原則
給与は原則として従業員本人へ直接支払います。
③ 全額払いの原則
給与は原則として全額を支払います。税金や社会保険料など法令で認められたものや、労使協定を締結したものなどを除き、会社が自由に控除することはできません。
④ 毎月1回以上払いの原則
給与は少なくとも毎月1回以上支払います。
⑤ 一定期日払いの原則
「毎月25日」など、支払日をあらかじめ決めて支払います。
現在では給与を銀行口座へ振り込むことが一般的ですが、これも一定の要件のもとで行われています。
給与は会社が自由な方法・タイミングで支払えるものではなく、法律上のルールに従って支払う必要があるということを理解しておきましょう。
制度改正に継続して対応する
給与計算では、一度計算方法を決めれば、そのままずっと使い続けられるわけではありません。
例えば、
健康保険料率
介護保険料率
雇用保険料率
源泉所得税の計算
最低賃金
などは、制度改正によって変更されることがあります。
古い料率や計算方法を使い続ければ、毎月の給与計算そのものが誤ってしまいます。
そのため、自社で給与計算を行う場合には、法改正や保険料率の変更に対応して自動的にアップデートされる給与計算ソフトを利用するのが基本です。
従業員数が増えたり、勤務体系が複雑になったりした場合には、社会保険労務士への委託も検討するとよいでしょう。