経営上の問題は一つの専門分野では完結しない
例えば、
「役員報酬を変更したい」
という相談があったとします。
一見すると会社の税金に関係するため、税理士へ相談すればよさそうです。
しかし実際には、税務上の取扱いだけでなく、会社法上必要となる手続きや社会保険料への影響など、複数の論点が関係することがあります。
あるいは、新たに従業員を採用するときも同じです。
社会保険や労働保険については社会保険労務士の専門分野ですが、給与を支払えば源泉所得税などの税務も関係します。雇用契約の内容によっては、法律上の確認が必要になることもあります。
このように、会社経営で起こる出来事は、税務・登記・労務・法律などの境界をまたいで発生します。
経営者がそのたびに、
「これは何の問題なのか」
「どの専門家に相談すればいいのか」
を正確に判断するのは簡単ではありません。
「まずこの人に聞く」という相談窓口を作る
そこで、普段から会社のことを理解している専門家の中から、
「何かあったら、まずこの人に相談する」
という窓口を決めておくと便利です。
例えば税理士が相談窓口であれば、税務や会計についてはそのまま税理士へ相談できます。
一方で、相談内容が税理士の専門外であれば、
「これは司法書士に確認した方がよいですね」
「この問題は社会保険労務士へ相談しましょう」
と判断してもらい、適切な専門家につないでもらいます。
もちろん、相談窓口は必ず税理士でなければならないわけではありません。
重要なのは、会社の状況をある程度理解していて、必要に応じて他の専門家と連携できる人を一人持っておくことです。
専門家同士が直接話せる関係を作る
複数の専門家が関係する問題では、経営者がそれぞれの専門家の間に入って情報を伝えることがあります。
例えば、
税理士に相談する
↓
税理士から確認事項を聞く
↓
経営者が司法書士へ伝える
↓
司法書士から回答をもらう
↓
経営者が税理士へ伝える
という流れです。
これでは経営者の負担が増えるだけでなく、専門的な内容を伝える途中で認識のずれが生じる可能性もあります。
必要な場合には、
税理士 ↔ 司法書士
税理士 ↔ 社会保険労務士
税理士 ↔ 弁護士
というように、専門家同士が直接確認できる関係を作っておくとスムーズです。
経営者自身が専門家同士の「伝言係」になる必要はありません。
それぞれの専門家が自分の専門分野を担当しながら、必要な情報を共有できる状態を作ることが大切です。
専門家は会社の成長に合わせて増やしていく
創業したばかりの会社が、最初からすべての専門家と継続的な契約を結ぶ必要はありません。
必要な専門家は、会社の成長によって変わっていきます。
例えば、
会社を設立する
→ 司法書士
税務申告や経理が始まる
→ 税理士
従業員を雇う
→ 社会保険労務士
重要な契約や外部からの資金調達が増える
→ 弁護士
IPOを本格的に目指す
→ 公認会計士・監査法人
というように、必要になったタイミングで専門家との関係を作っていけば十分です。
ただし、必要になってから全く面識のない専門家を一から探すとなると、時間がかかります。
普段相談している専門家から、信頼できる他の専門家を紹介してもらえる関係があれば、会社の成長に合わせて専門家のネットワークを広げていくことができます。
「何でも答えてくれる人」を探す必要はない
経営者からすると、一人の専門家に何でも相談できれば便利です。
しかし、税理士、司法書士、社会保険労務士、弁護士などには、それぞれ異なる専門分野があります。
そのため、
「何を聞いても自分で答えてくれる専門家」
を探すことよりも、
「自分の専門外であれば、それをきちんと伝え、適切な専門家につないでくれる人」
を見つける方が重要です。
専門家側にとっても、自分だけですべてを解決しようとするのではなく、必要に応じて他の専門家の力を借りることが、会社にとってよりよい結果につながります。
経営者が専門家を選ぶ際には、その人自身の専門知識だけでなく、周囲にどのような専門家とのネットワークを持っているかも一つのポイントになります。